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インタビュー特集

次回の炊き出しは10月28日(日)になります

インタビュー

Interview vol.1 おっちゃんインタビュー 「仕事かけもちしてアパート借りたい。嫁さん帰ってくるの楽しみやね」 和田 明(わだ あきら)さん

「自己責任」という言葉で片付けられないようなさまざまな紆余曲折があって、おっちゃんたちはここに来ます。
1度の炊き出しに集まる数百人の一人ひとりにある、それぞれの背景。
志絆会が提供する食事はもちろん、肩たたきも体感していればすぐさま「もらって!」と仲間に声をかけられる、ちょっとした人気者の和田さんに、お話をお聞きしました。

ホームレスとしてのくらし

ーー 鮮やかなブルーの上着にジーンズ、きれいに手入れされた革靴という、とてもホームレスとは思えない装いで、和田さんは現れました。

和田さん(以下 和田)
「歳とったら、茶色の服とか着たりするやん、あれはいややねん。
いつもこんな格好で歩いてるから、ホームレスとは見られへん」

ーー 和田さんが釜ヶ崎にやってきてから、もう20年以上が経ちました。
しかしホームレス生活が始まったのはそれよりももっと前から。

生まれたのは大阪市西淀川区。
中学を出てから、父親の勤めていた鉄工所に自身も就職しますが退職し、18歳のころハローワーク求人で見つけた自衛隊に入隊します。
物価も安かったけれどもそれでも当時のお給料は1ヶ月75,000円ほどで、いまの自衛隊員に比べればとても薄給。
ですが、お給料はほとんど実家へ入れていたと和田さんは言います。

和田
「(自衛隊での)給料は、そんなに使うこともないから、ほとんど親のとこに渡ってた。
小さい頃から、親には小遣いもらったことない。
もしなにか欲しければ家の手伝いをして、買い物とか行くでしょ。
そのお釣りを小遣いにしてた」

ーー 5年ほどで自衛隊をやめてから、和田さんは実家を出ます。
そのあと、梅田や伊丹などを点々としつつ、清掃会社や印刷会社、飲食店や文楽の黒子(!)など、あらゆる職を渡り歩きます。

そしてたどりついた西成で、現在は主にシェルターに寝泊まりしながら、ときには短期派遣で日本各地に移動し、生活しています。


和田さん(以下 和田)

「去年は、半年くらい稚内でホタテの貝むきをしとったよ。
そのあとは青森で、豚肉の加工を2ヶ月くらい。
そのあと大阪に戻って、またアルバイトをちょこちょこしてる。
西成におったら、お金なくても生活はできるからね」

ーー 今のお仕事はショッピングモールのゴミの分別。
夜8時から12時くらいまでが勤務時間で、月の収入は6〜7万円ほどになります。

和田さんは、年金も生活保護も受け取っていません。
生活保護を受けると、お金は手に入ってもある程度の制約が設けられてしまいます。
いまの仕事はひとつだけですが、ゆくゆくは掛け持ちをして稼いだお金をすべて自由に使い、アパート暮らしをするという目標がある和田さんは、あえて生活保護を受けずに生活しています。

そして、健康保険証も持っていないため、健康を害したとしてもずっと働き続けなければいけない状況。
ときにはもちろん、不調があるときもあります。
そんなときでも「我慢して、気合で治す。
医療センターには行ったことない」と、和田さんは笑います。

働けるうちはずっと働く

ーー 体が丈夫なら、働ける。
働ける間はちょっとでも自分で稼がないといけない、と和田さんが頑張る理由は、ただ生きていくためというだけではありません。
和田さんには奥さんがいます。
とはいっても、戸籍上の婚姻関係は解消していて、それはそのほうが奥さんの年金受給額が上がるから、という理由。

和田さんは、毎月の収入から半分以上を奥さんへ渡しています。

和田
「炊き出しはいろんなところでやってる。
みんな(ホームレス仲間)よう知ってるから情報はきく。
でもあんまりあちこちに行くのは、好きじゃないから。
カレーは好きやね。
一週間でもずっと食べられる。
炊き出しがなくなったら、困るかな。」

ーー 時折、職場から売れ残りのお弁当をいただくこともある和田さん。
しかし、それはいつもあるわけではありません。
炊き出しもお弁当もない日は、食事を我慢すると言います。

和田
「仕事も、食事も、ないときはないときでどうにかなる。
どうにでもできる。
今までもそうやって生きてきたから」

ーー 和田さんの言葉は、長いホームレス生活のなかでどんな状況でも切り抜けてきたという経験値から発せられるもの。
でも、いつまでもこのままでいいと思っているわけではありません。

和田
「いつまでもこんな生活しとってもしゃあない。
お金なんとかして、住むところを決めたい。
仕事探して掛け持ちして、お金ができたらアパート借りる。
そうせんと、嫁さんに申し訳ない(苦笑)」

ーー 現在の夜の仕事だけでなく、昼間にもできる仕事を掛け持ちして、アパートを借りられるようになることを、今は目指しています。
そのため、足繁くハローワークへ通い1000件を超える求人情報を和田さんはすべて見ていくのです。

和田
「シェルターに若い子もおるけど、若い子やったら仕事なんぼでもある。
僕らの年齢になると、時間を削られてしまう。
週6日でシフト希望入れてても3日や4日に減らされたりね。
せやから自分の思ってることなかなかできひん。
即決って書いてある求人でも、待たされたり保証人が必要やったりするんよ。
そのときは、嫁さんに頼んでる。
『借金の保証人か!』って言われることもあるけど(笑)」

これからのこと

ーー そんな和田さんの楽しみは何かを訪ねてみると、「嫁さんをどっかに連れてったることとかかな」と、ちょっと照れながら教えてくれました。

1ヶ月に何度か会っているという奥さん。
これから先、アパートを借りたいのも、奥さんといっしょに暮らせるようになるためです。

今までいろんなところへ行っていろんな仕事をして、得られた収入はその都度決して多くはない額でしたが、いつもそれは自分が生きるためだけのものではありませんでした。
とても60代とは思えない肌ツヤの良さと、くしゃくしゃになる笑顔がとても印象的な和田さん。ちょっと照れ屋でも、その笑顔からは優しさがにじみ出ています。

和田
「嫁さんとは、籍を抜いても仲いいよ。
もう20年付きおうてる。
アパート借りれたら、嫁さん帰ってくるって言うとるからね。
それが楽しみやね。
せやから真面目に仕事せな。
あんまり遊んどったら、遊び癖ついて仕事が嫌になってしまうでしょ。
前にそれ一回あったから、せやから時間短くても働いて、ちゃんとお給料もらわんとね」

取材・編集:
池田 佳世子
/ 写真:
新 レイヤ