参加した動機は「自分のため」
ーー お父さんの正徳さんは、通っていた高校が実は釜ヶ崎の近くにあったのだそうです。
当時も釜ヶ崎にはホームレスの方はたくさんいて、日々その方たちをみていたのにも関わらず、正徳さんは彼らのことをよくわかっていなかった、と言います。
正徳さん(以下 正徳)
「当時は全然知らなくて、世間一般で言われるような偏見を鵜呑みにしていたんです。
仕事を怠けたからホームレスになったんじゃないかとか、お酒飲んで生活が荒れてるんじゃないかとか。
でも、炊き出しのボランティアに参加して、実際は全然そんな人たちじゃないってことを知りました」
ーー 大人になって親になって、社会で働くうちに、だんだん行き詰まりを感じてきたという正徳さんは、自分をもっと高めなければ、と思うようになります。
初めて炊き出しに参加したのは2011年の震災があった年。
縁あって出会った志絆会代表の樋口さんは、正徳さんにとっては「人格者」ともいえる存在でした。
正徳
「樋口さんは人望もあるし、樋口さんのやってる炊き出しを自分も手伝おうと。
だから、人のためというよりは、自分のためでした」
ーー そんなお父さんを身近で見ていた娘の菜々子さんは、お父さんからボランティアの話を聞くうちに、自然と興味を持つようになります。
菜々子さん(以下 菜々子)
「父が最初にボランティアを始めたときはよくわかっていなかったんですけど、話を聞くうちに行ってみたいなと思うようになって。
わたしは看護の学校に行っているので、将来看護師になったとき必要なコミュニケーションの力をつけたいとか、人の気持ちをわかる人間になりたいとか、視野を広げたいっていう思いがあって、参加させていただきました」
ーー おふたりとも、きっかけは自分のため。「ボランティア」に興味があったというわけではないようです。