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インタビュー特集

次回の炊き出しは12月23日(日)になります

インタビュー

Interview vol.2 支援者①インタビュー 「心の垢を取るのにいいですよ。そして普通の会話ができることも」 宇田 正徳(うだ まさのり)さん 宇田 菜々子(うだ ななこ)さん

たくさんのボランティアのなかには、親子で参加する方もいらっしゃいます。
ご紹介する宇田さん親子は、先に参加したお父さんを見て興味を持った娘さんも、いまではボランティアのひとり。
いつもと同じ家族が、いつもとは少し違う表情を見せる炊き出しの現場で、お互いのことはどんなふうに見えているのでしょう。
そしてそれぞれがどんな思いで参加し、どんな経験を得られたのか。
おふたりにお話を伺いました。

参加した動機は「自分のため」

ーー お父さんの正徳さんは、通っていた高校が実は釜ヶ崎の近くにあったのだそうです。
当時も釜ヶ崎にはホームレスの方はたくさんいて、日々その方たちをみていたのにも関わらず、正徳さんは彼らのことをよくわかっていなかった、と言います。

正徳さん(以下 正徳)
「当時は全然知らなくて、世間一般で言われるような偏見を鵜呑みにしていたんです。
仕事を怠けたからホームレスになったんじゃないかとか、お酒飲んで生活が荒れてるんじゃないかとか。
でも、炊き出しのボランティアに参加して、実際は全然そんな人たちじゃないってことを知りました」

ーー 大人になって親になって、社会で働くうちに、だんだん行き詰まりを感じてきたという正徳さんは、自分をもっと高めなければ、と思うようになります。
初めて炊き出しに参加したのは2011年の震災があった年。
縁あって出会った志絆会代表の樋口さんは、正徳さんにとっては「人格者」ともいえる存在でした。

正徳
「樋口さんは人望もあるし、樋口さんのやってる炊き出しを自分も手伝おうと。
だから、人のためというよりは、自分のためでした」

ーー そんなお父さんを身近で見ていた娘の菜々子さんは、お父さんからボランティアの話を聞くうちに、自然と興味を持つようになります。

菜々子さん(以下 菜々子)
「父が最初にボランティアを始めたときはよくわかっていなかったんですけど、話を聞くうちに行ってみたいなと思うようになって。
わたしは看護の学校に行っているので、将来看護師になったとき必要なコミュニケーションの力をつけたいとか、人の気持ちをわかる人間になりたいとか、視野を広げたいっていう思いがあって、参加させていただきました」

ーー おふたりとも、きっかけは自分のため。「ボランティア」に興味があったというわけではないようです。

わかったこと、かわったこと

ーー そんな思いから参加して、おふたりともいまではすっかり現場では顔なじみ。
参加する前と今とではどんな心境の変化があったのでしょうか。

正徳
「日本が経済成長したときにたくさん建物が増えていきましたが、それを支えてこられた人たちが、いまホームレス状態になっている場合もあるということを、初めて知りました。
そういう人たちの努力もあって今の日本が豊かになってるんだなと。
炊き出しに並ぶ方たちのなかには、とても人間性の豊かな人もいます。
全員がそうというわけではないかもしれないけど、自分のものを惜しみなく他人に与えられる人がいたり。
自分の生活にすら困ってるはずなのに、樋口さんに『これ炊き出しに使って』とお金を渡す方がいたんです。
数日間の生活費に相当するくらいの金額を、人に惜しみなく渡せるって、豊さのひとつなのかなと思いますね」

菜々子
「わたしは人見知りなところがあったんですけど、炊き出しに参加するといろんな方がいらっしゃるので、それがなくなったってすごく実感します。
学校でも、人に声かけるときに声かけづらいなって思ってた感情がなくなったんです。
『この人にはこんないいところがあるんだ』って、見つけていこうって思うようになりました。
社会人の方とどのように交流すればよいのか分からなかったのですが、炊き出しに参加して『年上の人とでもこんなに自然にコミュニケーションを図ることができるんだ』っていう気づきもありました」

ーー 参加する中で、ボランティアの人たちはそれぞれの気付きを得ていきます。
その気付きは、自分の抱えているモヤモヤに対する答えだったり、ときには自分が持っている「弱み」に対峙することだったり。
その「弱み」とは、例えば偏見を持っていること、他人を信じられないと思っていること、不安が強かったりすること、というようなどんな人にもあるであろうもの。
いずれにしても、気付きを得たときに人は変わっていきます。きっとその変化は、ご自身のみならず、宇田さん親子のようにまわりにも波及するのかもしれません。

実際に、菜々子さんのお友達も菜々子さんからの情報がきっかけで、この炊き出しボランティアに参加しています。
菜々子さんの行動に純粋な興味を持つ人もいれば、ボランティア活動に意欲的な人も。

菜々子
「この炊き出しに参加されてる方は、すごくいい方ばっかりなので、そんな方たちから友達もいっぱいいいものを吸収してほしいって思います。
それでホームレス状態の方の現状を知って偏見がなくなればいいなって。
友達は『ホームレスの人にもいい人いっぱいいてるんやな』って話してくれたりします」

意外な変化も

ーー 「これからもボランティアは続ける」と、正徳さんは言います。
それは『いままで充分いろんなものを与えてもらったので、返していかなければいけない』から。
ボランティア自体に興味がない人も多くいる中で、その心理に到達するのはかなりのものなのでは?との問いに、正徳さんはこう続けます。

正徳
「自分自身の生活もままならない人が他人に分け与えているのを見て、そこに感動したからかもしれないですね。
その光景は、いまでも忘れられないです。
自分の持ってるもののほんの一部でも、分け与えるって難しいと思うんですけど、それができる人がここにはいる。
まさに『貧者の中にこそ聖人がいる』という言葉を体験することができました。
だから、やっぱり頭で考えるんじゃなくて、見て感じること。
そこから『返していかなければ』と思うようになったのかなと、思いますね」

ーー そんなご自身の経験から、「ボランティアは心の垢を取るのにいい」と、正徳さんは教えてくれました。

正徳
「まわりの人たちとうまくいかないとき、謙虚さとか素直さがなくなってるとき、慢心してるなと思うときは、炊き出しのボランティアに参加してみるといいのかなと思いますよ」

ーー そして菜々子さんも、自分が変化した実感から、ボランティアに参加して得られたものを教えてくれました。

菜々子
「自分が、これでいいのかな、とか何か悩んでいるときに、自分のなかに閉じ込めてしまうとなにも解決しないと思うんです。
でも、炊き出しに参加していろんな方とコミュニケーション取ると、自分には発見できなかったような答えをもらえたりするので、しっかり会話できるこの場に参加するのっていいんじゃないかと思います!」

ーー さらに、親子で参加されたおふたりにはもうひとつ、意外なうれしい変化があったようです。

ーー そして菜々子さんも、自分が変化した実感から、ボランティアに参加して得られたものを教えてくれました。

菜々子
「家の中だと、父とはなかなか共通の話題がないから、用事があるときくらいしか会話しないけど、こういうボランティアの場だと自然に会話ができるようになったのがいいなって思います」

ーー なるほど!年頃の娘さんを持つ世の多くのお父さんは、娘と会話が噛み合わなくて寂しい思いをすることもある、なんていう方もいらっしゃるかもしれませんよね。

正徳
「娘の日頃の話はついていけないことも多いです、例えばジャニーズとか(笑)。ここでは普通の会話ができるっていうのが、いいですね」

ーー 優しくてさわやかなおふたりですが、とても真摯に、炊き出しにもホームレスの方々にも向き合っているお気持ちが伝わってきました。
でも、ときおり正徳さんが見せる「お父さんの顔」。
菜々子さんの見せるはにかんだ「娘の顔」。
ちょっと気恥ずかしそうな、でも嬉しそうなおふたりの笑顔は「炊き出し」という活動がもたらすさまざまな「ギフト」とも呼べるものを、表しているかのようでした。

取材・編集:
池田 佳世子
/ 写真:
新 レイヤ