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インタビュー特集

次回の炊き出しは2月25日(日)になります

インタビュー

Interview vol.3 支援者②インタビュー 「小さな喜びが大きな力になる。あたりまえのコミュニケーションを通して、釜ヶ崎の人情に触れてほしい」 ソシク・ジョージさん 古市 邦人(ふるいち くにひと)さん

志絆会の炊き出しボランティアの場には、実は炊き出しの仕込みを手伝う人ばかりが参加しているわけではありません。
それぞれの興味やスキルを活かして、炊き出しの場に集まるホームレスの人たちをサポートしている人もいるんです。
音楽の力で、配布の現場を盛り上げるジョージさんと、肩たたきというちょっとユニークな特技で参加している古市さん。
おふたりの思いを聞いてみました。

音楽には力がある

ーー 日本に住んで30年になるジョージさんの職業は牧師です。
活動開始当時からこの志絆会を知るジョージさんは、当初は炊き出しのお手伝いをしていましたが、現在はお米の提供と、配布の現場でギターを弾いてのライブ演奏でボランティアへ参加しています。

ジョージさん(以下 ジョージ)
「聖書には『隣人を愛せよ』とあります。
どんな人にも価値があるから、無視するわけにはいかない。
私はホームレスになったことはないですが、不幸が続いて起こった辛い時期があって、周りの助けがすごく必要なときがあったんですよ。
でもそのときすごくみなさんにサポートしていただいて。
『想い』をくれたんです。
自分も助けられた。
だからそれが続けているモチベーションですね」

ーー お仕事の都合で、日曜日の朝にあまり炊き出しの仕込みを手伝えなくなった代わりに、音楽でのサポートをしようと思ったのは「音楽には力があるから」。

ジョージ
「音楽は人を喜ばせる力があるでしょう。だから、食事でお腹の満足を、音楽で耳と心の満足を、と。できるだけみなさんにいい気持ちになってもらいたいです」

小さな喜びが大きな力になる

ーー 現場でのホームレスの方たちの反応は?との質問には
「前で踊ったり手拍子したり。まあ無視する人もいるけど(笑)」

ジョージ
「みんなお腹が空いていて食事が優先だから、それは仕方ない。
でも、私の音楽を聴きながら踊ったり手拍子したり、その喜んでいる姿を見ると、いいなと思います。
配布の現場には数百人のホームレスの人がいて、それぞれがなぜそうなったのかはわからないけど、この活動を通じて『私はあなたの気持ちがわかりますよ』と伝えるんです。
1食分のカレーしか作れないけど、お菓子や音楽も少ししか提供できないけど、『この気持ちを受け取ってください』と伝える。
そのとき笑顔を見せてくれると、やっていることに価値があるなぁと思うんですよ。
だから、小さな喜びを伝えることが、大きな力になると思います。
言葉にも笑顔にも、力があります。
『こんにちは』とあいさつするだけでも、それには大きな意味があるんですよ」

ーー ホームレスの方一人ひとりと接するのは、カレーを手渡すときのほんの一瞬です。
そして、みんなでその場を共有しているのも、カレーを提供している数時間ほどしかありません。
でも、そんなささやかな場での小さなコミュニケーションだとしても、あきらめないように、とジョージさんは言います。

ジョージ
「ホームレスの人たちは、言わば社会に忘れられた、変化の速い社会に取り残された人たちだと思います。
私たちの活動で、彼らの日常がどれほど変わるかはわからないし、結果も見えないけど、でもなんらかの影響があると思います。
ホームレスの人たちが、少しでも仕事ができるようになったり、今の状態から立ち上がれるように願ってます。
ちょっとだけでも、『がんばろう!』と思ってもらえればいいなと思いますね」

レッテルを剥がしたい

ーー 一方、古市さんは配布の現場で、ホームレスの方たちに肩たたきをしています。
なかなかじっくりとコミュニケーションをとれない、炊き出しの現場。
少しでもホームレスの人とボランティア参加者がいい出会いをしてほしい、という思いから始めたことでした。

大学時代から「コミュニケーションツールとしてのマッサージ」を実践していた古市さんは「ホームレスの人に肩たたきをしたらどうなるだろう?」と思い、代表の樋口さんに許可を得て、さっそく「肩たたきしませんか」と書いたダンボールを持って、配布の現場に立つようになりました。

古市さん(以下 古市)
「最初はやっぱりだれも来なかったんですよ(苦笑)。
僕も実はなんだかんだでビビってました。
どんな人がいるかわからないし、なにを言われるか、受け入れられるか、排除されるのか...。
でも今は全然そんなことなくて、安心できるし、おっちゃんたちには意外となんでも訊けるしなんでも話せます」

ーー 背中越しだからこそ話せることもあるのかもしれない、と古市さん。
聞くのには少し躊躇してしまいそうなことでも、肩を叩きながらホームレスの方々といろんな会話をしてきました。
「肩凝ってますね、力仕事ですか?」「重たいもの持ったりするんですか?」そんな糸口から始まる会話は「ホームレスの人」と「支援者」という壁を越えた「あたりまえ」のコミュニケーションを作り出してくれます。

ーー 古市さんにも最初はあった偏見。それは「レッテル」とも言い換えられます。
偏見やレッテルを取っ払うため、「それがなくなったいちばんの人間が僕自身だった」と話す古市さんは、次第にご自身だけでなく、ボランティアのメンバーにも「おっちゃんたちと話したい」という人には肩たたきへ参加してもらうように取り計らっているのです。

古市
「会ってもいない人を怖いと決めつけたり、『ホームレス』というカテゴリでレッテルを貼ってしまうのは僕はすごく危険でもったいないことだと思うんですよ。
で、そのレッテルの剥がし方は、たったひとりでも『いい出会い』をすることだと思っていて。
レッテルを貼った相手をじっくり見る時間をとってもらうために、肩たたきをしています。
肩たたきをしていると『いい出会い』ができる確率が高いんですよ。
話を聞いていくとその人なりのいろんな事情が分かったり、肩たたき役を交代してくれる人がいたり。
そのうち、その人に対してのイメージが変わる瞬間があるんです」

多感な時期にこそ体験してほしい

ーー 古市さんが、はじめて炊き出しのボランティアに参加したのは学生の頃。
自分の経験もふまえて、参加するのはなるべく早いほうがいい、と言います。

古市
「最初に炊き出しの列に500人以上並んでいるのを見たときは、こんな場所があったのかと衝撃でした。
でも社会ってつながってるから、僕も無関係ではない。
いつ誰が病気になって働けなくなるかわからないし。
いま生きてるこの大阪で起こっている現実を知れば、自分の生き方を見直すきっかけにもなると思います。
それって、自分の生きてる場所とは違うところを見ないとわからないこと。
でも、釜ヶ崎が悲惨な場所だというわけじゃないし、ここにも愛や人情やそれぞれの人生があって、それに触れてほしい。
僕も知り合いで悶々としてる人がいたら、ここに連れてきます。
ボランティアの人もみんないい人ですし、話してたらいい空気に触れられるんですよ」

ーー 仕込みの現場でも配布の現場でも、参加者はみんなおおらかでオープンな人ばかり。
そんな人たちの醸す雰囲気が、音楽や肩たたきといった、バラエティに富んだアイデアを受け入れる空気を作り出しているんですね。
どんな特技でもスキルでも、この現場で活きる可能性があります。
関わり方はひとそれぞれ。
それは「支援」ではなく「コミュニケーション」だと考えればこそ見えてくるのかもしれません。

取材・編集:
池田 佳世子
/ 写真:
新 レイヤ