きっかけは頼まれごとから
ーー 樋口さんがこの活動を始められたのは1996年。
阪神淡路大震災の起きた翌年でした。
実は、いちばん最初に炊き出しを始めたのは、樋口さんではなかったのだそうです。
本当の発起人は、とある英国人女性。
その方から「手伝って」と言われたことが始まりだったのです。
樋口さん(以下 樋口)
「西成のホームレスの人らに食事を提供したいから、一緒に行ってくれませんかと言われて。
樋口さんなら逃げませんでしょうと。
ほんまは逃げたかったけど(笑)」
ーー ところが、活動開始後まもなく、家族の事情によりその女性はイギリスへ帰国してしまいます。
そのとき残された樋口さんとボランティアメンバーは、彼女がいなくても自分たちで炊き出しを続けることを決めたのでした。
最初のきっかけは、意外にも他人からの依頼だった支援活動。
しかし、これがその後20年以上続く炊き出しの支援活動へと成長していくことになるのです。
ーー 「言い出しっぺ」がいなくても続けてこられた20年ですが、その間にやめようと思ったことはなかったのでしょうか。
樋口
「ないですね。しつこいから、やりだしたら死ぬまで(笑)。
善きことをいったんやりはじめたらそれを続ける。
そのためには続けるための工夫が必要です。
自分の心の安定がないと『おもしろくない!もうやめや』となってしまうから、そうならないよう忍耐力や意志の力を鍛えることが大事やと思います。
それの勉強の場ですわ」
ーー ご自身でも会社を経営されている樋口さん。
「続けていく」ということの大切さや難しさは、経営でもボランティアでも、共通するところなのでしょう。
その哲学には「自己の成長」というテーマが、根底に流れています。
樋口
「成長というのはなにかというと、『めんどくさがらない』ということ。
この、『めんどくさい』ということをいかに自分のなかから無くせるか、ということが、ボランティアにおいていちばん得るところですね」